【感想文】修理する権利 使いつづける自由へ

本書を読んだので、10年近く使ってきたスーツケースを修理に出すことにした

アーロン・パーザナウスキー 作/西村伸泰 訳 2025年4月28日

青土社 ||歴史/ドキュメント:修理する権利

イメージ曲: 白虎野の娘(平沢進)

2000年代、任天堂の携帯ゲーム機の説明書には以下のような旨の記述があった記憶がある。
「バッテリー交換以外で裏蓋を開けた跡があれば保証対象外です。」

やがて私たちはiPhoneを持ち始めた。どんなにクオリティの高い製品であっても、リチウムイオンバッテリーを使っている以上、何年も使っている内にバッテリーがヘタってくる。バッテリーの持ちが悪くなったので、バッテリーだけ交換しようと思い立っても、そこには色々なハードルが待ち構えている。少なくとも、素人が自分でバッテリーを取り寄せて、蓋を開けて交換することはできない。

本書は、修理の歴史から修理の良いところ、そしてメーカーが修理を制限する理由やその手段、知財法、特許法、著作権法、消費者保護法、反トラスト法(独占禁止法)を始め、法的な問題を網羅的に解説している。

本書を読んでいると、一つのデバイスを作るために、どれだけの貴重な鉱物を使っているか、どれだけの水や資源を消費しているか、そのために搾取や紛争が起きている可能性があること…それらを改めて自覚させられる。修理は、そうした消費を遅らせる手段の一つであろう。

著者は、アメリカ合衆国の法律の専門家であり、事例の解説はほとんどがアメリカかヨーロッパである。実は、日本には、「修理する権利」に関する独自の障壁がある。
専門の人もよく解説しているのだが、それが「電波法」とそれに伴う「技適」である。
私自身は法律の専門家ではないため、詳しい説明は専門家におまかせするとして、簡単に述べれば、スマートフォンなど無線を使うような機械の場合、メーカー以外や登録(登録修理業者制度)のない人が、勝手に裏蓋を開けると、法律上の問題になる可能性がある、というものである。
残念ながら、本書には電波法への言及は無く、末尾の吉田健彦さんによる「解題」にも電波法の問題は書かれていなかった。

なお、同じ「無線(Wifi)」を使う製品でも、中身をいじることが前提になっている一部のデスクトップパソコンなどは、無線のモジュールのみに技適が適用されていることが多いことは述べておきたい。

ところで、本書を読んだ私は、取っ手が壊れたスーツケースを修理に出すことにした。10年近く使ってきた。他の部分は丈夫なので、まだまだ活躍してもらおう。

参考: https://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/others/repairer/#4046302 2026年9月8日閲覧

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